ローン残債ありの車、売却は待って！専門家が教える後悔しないための全知識と安全な業者選び

ローンが残っている車は、正しい手順を踏めば問題なく売却できます。しかし、その手続きには「契約後の減額」といった思わぬ落とし穴も。この記事では、元・国民生活センター相談員の専門家が、安全な売却の全手順から、トラブルを未然に防ぐ優良業者の見極め方まで、あなたの不安が安心に変わるよう徹底解説します。

この記事でわかること

• ローン残債があっても車を売却できる具体的な手順
• 競合が教えない「クーリング・オフが効かない」等の法的リスクと対策
• あなたの状況に合った、本当に信頼できるローンに強い車買取業者の見つけ方

そもそも、ローンが残っている車は本当に売れるの？【結論：売れます】

👉 このパートをまとめると！
ローン中の車でも売却は可能です。ただし、車の所有者が誰か（所有権留保）によって手続きが異なるため、まずは車検証の確認が必須です。

「ローンがまだ残っているから、この車は売れないんだろうな…」と諦めていませんか？
ご安心ください。結論から申し上げますと、ローン返済中の車であっても、全く問題なく売却することが可能です。実際に、多くの方がローン返済中の車を売却し、新しい車に乗り換えています。

ただし、少しだけ手続きが複雑になるのは事実です。その鍵を握るのが「所有権留保（しょゆうけんりゅうほ）」という仕組みです。

なぜ手続きが必要？鍵を握る「所有権留保」とは

ローンを組んで車を購入した場合、多くはローンを完済するまでの間、車検証上の「所有者」がディーラーや信販会社の名義になっています。これが「所有権留保」です。

これは、万が一ローンの返済が滞った場合に、信販会社が車を引き上げる権利を確保するためのものです。
つまり、日常的に車を使っているのはあなたでも、法的な所有者は信販会社などになっているため、あなたの意思だけでは自由に売却できない、というわけです。

この「所有権」をあなた自身の名義に変更する「所有権解除」という手続きを行うことで、初めて車を売却できるようになります。

まずは車検証の「所有者」欄を確認しよう

それでは、ご自身の車がどうなっているか確認してみましょう。お手元に車検証をご用意ください。
見るべきは「所有者」の欄です。

車検証のサンプルを見ると、「所有者」の欄にはディーラーや信販会社の名前が、「使用者」の欄にはご自身の名前が記載されていることが多いです。売却の際は、まずこの「所有者」欄に誰の名前が記載されているかを確認することが第一歩となります。

この欄が、

• あなたご自身の名前になっている場合 → 通常の売却手続きとほぼ同じです。
• ディーラーや信販会社の名前になっている場合 → 本記事で解説する「所有権解除」の手続きが必要です。

ほとんどの場合は後者にあたるはずです。しかし、心配は無用です。この複雑な手続きは、信頼できる買取業者であれば、すべて代行してくれます。

あなたの状況はどっち？査定額とローン残債の関係を自己診断

👉 このパートをまとめると！
車の査定額がローン残債を上回るか下回るかで、手続きとあなたの手元に残るお金が変わります。まずはご自身の状況を正確に把握しましょう。

ローン残債のある車を売却する上で、最も重要なのが「車の価値（査定額）」と「ローンの残り（残債）」のどちらが多いか、という点です。
このバランスによって、手続きのスムーズさや、あなたのお金の動きが大きく変わってきます。

ご自身の状況を正確に把握するために、2つのステップで確認してみましょう。

ステップ1：ローン残債の正確な金額を確認する方法

まずは、ローンの残債が正確にいくらなのかを把握しましょう。
確認方法は、ローンを契約している信販会社のウェブサイトにある会員ページや、契約時に受け取った返済予定表（償還表）を見るのが最も確実です。

手元に書類がない場合は、信販会社のカスタマーサービスに電話で問い合わせることもできます。

ステップ2：愛車の現在の査定額の相場を調べる

次に、あなたの愛車が今いくらで売れるのか、おおよその相場を調べます。
車種や年式、走行距離などの情報を入力するだけで、複数の買取業者から概算の査定額を知ることができる「一括査定サイト」を利用するのが最も効率的です。

この段階では、まだ契約する必要は全くありません。あくまで「自分の車の価値を知る」ための情報収集と割り切って、気軽に利用してみましょう。

【診断】あなたはどっち？アンダーローン vs オーバーローン

さて、2つの金額が揃ったら、いよいよ自己診断です。あなたの状況はどちらのタイプに当てはまるでしょうか？
以下の流れで簡単に診断できます。

1. まずローン残債の金額を確認します。
2. 次に愛車の査定額の相場を調べます。
3. 査定額がローン残債を上回るか、下回るかを確認します。

• アンダーローン（査定額 ＞ ローン残債）
  おめでとうございます！これは最もスムーズに進むケースです。車の売却額でローンをすべて返済しても、なお手元にお金が残る状態です。例えば、査定額100万円、ローン残債80万円なら、差額の20万円があなたの利益になります。
• オーバーローン（査定額 ＜ ローン残債）
  少し注意が必要なのがこのケースです。車の売却額だけではローンを完済できず、不足分をあなた自身が補う必要があります。例えば、査定額80万円、ローン残債100万円なら、不足する20万円をどうにかして用意しなければなりません。

【5ステップで完了】ローン残債がある車の売却手続き 完全ガイド

👉 このパートをまとめると！
ローン残債がある車の売却は5つのステップで完了します。特に「所有権解除」の手続きは、買取業者に代行を依頼するのが最も簡単で安全です。

「なんだか複雑そう…」と感じたかもしれませんが、ご安心ください。
これから解説するステップの多くは、信頼できる買取業者がサポート、あるいは代行してくれます。全体の流れを掴んでおけば、安心して任せることができますよ。

STEP1：必要書類を準備する

まずは、手続きに必要となる書類を準備しましょう。事前に揃えておくことで、その後の手続きが非常にスムーズになります。

表: ローン残債 車売却の必要書類リスト

※普通自動車と軽自動車で必要書類が少し異なりますのでご注意ください。

STEP2：買取業者を選び、査定を申し込む

書類の目処がついたら、実際に車を査定してもらう業者を選びます。
複数の業者に査定を依頼し、金額や担当者の対応を比較検討するのが、高く、そして安全に売るための鉄則です。

STEP3：契約を結び、所有権解除を依頼する

査定額や条件に納得できる業者が見つかったら、売買契約を結びます。
この際、必ず「所有権解除の手続きもお願いします」と伝えましょう。「ローンに強い」業者であれば、この手続きの代行は基本サービスに含まれています。

STEP4：ローン残債の精算を行う

契約後、買取業者があなたに代わって信販会社とやり取りし、ローン残債の精算手続きを進めてくれます。ここでの流れは、あなたの状況によって異なります。

• アンダーローンの場合： 買取業者が受け取った車両代金からローン残債を直接信販会社へ支払い、完済させます。そして、残った差額があなたの指定口座に振り込まれます。
• オーバーローンの場合： まず、買取業者へ車両を引き渡します。その後、査定額では足りなかった不足分を、現金で支払うか、後述する「追い金ローン」などを利用して精算します。

STEP5：車両の引き渡しと入金確認

すべての精算手続きが完了したら、車両を買取業者に引き渡します。
アンダーローンの場合は、差額が振り込まれるのを確認して、すべての手続きが完了となります。

【最重要】専門家が警告する、車売却の3つの隠れたワナと自己防衛策

👉 このパートをまとめると！
自動車の売買契約は一度サインすると簡単には覆せません。特に「契約後の減額」と「高額なキャンセル料」のトラブルには要注意です。

さて、ここからが最も重要なお話です。
手続きの流れはご理解いただけたと思いますが、その過程には、残念ながら消費者が不利になりがちな「落とし穴」が存在します。

私が国民生活センターの相談員として、数多くのトラブルに対応してきた経験から、これだけは知っておいてほしい「3つのワナ」と、そこからご自身を守るための方法をお伝えします。

ワナ①：「車はクーリング・オフできない」という法的現実

✍️ 筆者（専門家）の経験からの一言アドバイス

【結論】: 査定士の「今決めてくれればこの金額で頑張ります」という言葉を鵜呑みにして、その場で契約書にサインするのは最も危険です。自動車の売買はクーリング・オフが効かないため、一度サインすれば後戻りは極めて困難になります。

実は、私が相談員時代に受けた電話で、今でも忘れられないものがあります。それは、「昨日、勢いで契約してしまったが、やはり考え直したい。クーリング・オフできるはずだ」と涙ながらに訴える若いご夫婦からの相談でした。

法律上、適用対象外であることを伝えた時の、あの落胆した声…。消費者庁のウェブサイトでも明確に注意喚起されている通り、この法的空白こそが、多くのトラブルの温床になっているのです。だからこそ、契約書へのサインは、すべての疑問が解消されるまで絶対にしてはいけません。

ワナ②：契約後に理由をつけて迫る「減額交渉」の手口

「契約時には30万円と言われたのに、車を引き渡した後で『傷が見つかったから』と10万円に減額された」
これは、非常に典型的なトラブルのパターンです。

国民生活センターの報告によれば、中古車売却に関するトラブル相談は後を絶たず、中でもこの「契約後の減額」は最も多い手口の一つです。

考えてみてください。買取業者は査定のプロです。そのプロが査定をして金額を提示し、双方が合意して契約したのです。
それにもかかわらず、後から一方的に減額を要求してくるのは、原則として不当であると強く認識してください。

ワナ③：口約束の後に請求される「高額なキャンセル料」

電話や査定の場で「じゃあ、お願いします」と口頭で合意した後、もっと良い条件の業者が現れたためキャンセルを申し出たら、法外なキャンセル料を請求された、というケースも少なくありません。

口頭であっても、双方が合意すれば契約は成立する可能性があります。
「キャンセルについては何も聞いていなかった」とならないよう、必ず契約前に、キャンセルが可能な期間や、費用が発生するのかどうかを書面で確認する習慣をつけましょう。

本当に信頼できる「ローンに強い車買取業者」の3つの見極め方

👉 このパートをまとめると！
ローンに強い業者とは、単に手続きを代行するだけでなく、取引の透明性が高く、消費者を守る姿勢が明確な業者のことです。

✍️ 筆者（専門家）の経験からの一言アドバイス

【結論】: 良い業者か見極める一番簡単な方法は、「契約を急がせない業者か」どうかです。本当に自社の査定とサービスに自信がある業者は、顧客に考える時間を与えることを恐れません。

私が相談を受けてきた中で、悪質な業者の共通点は決まって「今日決めてくれたら」「今だけ」という言葉で消費者の判断力を奪うことでした。逆に、優良な業者は「一度ご家族と相談してみてください」とさえ言ってくれます。この姿勢の違いが、信頼できるパートナーを見つける上で最も重要な指標になります。

では、先ほどのようなトラブルを避け、安心して任せられる業者はどうやって見つければよいのでしょうか。
ローン残債の処理をスムーズに行ってくれるのはもちろん、消費者の立場に立ってくれる優良業者には、共通する3つの特徴があります。

見極め方①：「契約後の減額なし」を公約しているか

最も信頼できる指標の一つが、「契約後の減額は一切ありません」と公式に宣言しているかどうかです。
例えば、カーセブンのように、一度提示した金額での買取を保証している業者は、自社の査定に責任を持つという誠実な姿勢の表れであり、消費者にとって非常に安心できる材料となります。

見極め方②：キャンセルポリシーが明確で良心的か

契約後のキャンセルに関する規定が、ウェブサイトなどで明確に公開されているかも重要なチェックポイントです。
「契約後でも車両の引き渡し前ならキャンセル料はかからない」「契約から7日以内なら無料でキャンセル可能」といったように、消費者に考える時間を与えてくれる良心的な規定を設けている業者は、信頼性が高いと言えるでしょう。

見極め方③：業界団体「JPUC」に加盟しているか

JPUC（一般社団法人日本自動車購入協会）は、中古車買取業界の健全化を目指す団体です。
JPUCに加盟している業者は、不当な勧誘行為の禁止など、協会が定める行動基準を遵守することが求められています。万が一トラブルになった際の相談窓口も設置されており、業者選びの際の一定の安心基準となります。

表: 【トラブル回避】ローン残債に強い主要買取業者の消費者保護サービス比較 (2025年8月22日時点)

よくある質問（FAQ）

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ローン残債車の売却に関する細かな疑問に、専門家が一問一答形式で簡潔にお答えします。

Q. オーバーローンの不足分を分割で支払うことはできますか？

A. はい、買取業者が提携している「追い金ローン」などを利用すれば分割払いが可能です。ただし、金利が比較的高めに設定されている場合もあるため、可能であれば銀行のフリーローンなど、他の選択肢とも比較検討することをおすすめします。

Q. 売った後に不具合が見つかったら、責任を問われますか？

A. はい、民法上の「契約不適合責任」を問われる可能性があります。これは、契約内容に適合しない欠陥が後から見つかった場合に、売主が負う責任のことです。修復歴やエンジン系統の不調など、ご自身が把握している不利益な事実は、査定時に正直に申告することが、結果的にご自身を守ることに繋がります。

Q. 残価設定クレジットで購入した車も売却できますか？

A. はい、もちろん可能です。ただし、最終回の支払額として設定されている「残価」の精算が必要になるなど、通常のローンより手続きが少し複雑になる場合があります。このテーマについては、より詳しく解説した別の記事をご参照ください。

まとめ：ローン残債のある車の売却は「情報武装」で成功する

👉 このパートをまとめると！
ローン残債車の売却成功の鍵は、手続きを理解し、リスクを学び、信頼できる業者を選ぶことです。まずは無料査定で第一歩を踏み出しましょう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ローンが残っている車の売却は、一見すると複雑に感じるかもしれませんが、ポイントさえ押さえれば、何も怖いことはありません。

成功の鍵は、以下の3つのポイントを「情報」としてしっかりと武装しておくことです。

1. 手続きはプロに任せられる： 面倒な所有権解除やローン完済手続きは、信頼できる業者が代行してくれます。
2. ただし法的リスクの知識は必須： 「クーリング・オフが効かない」という事実を知っているだけで、安易な即決を防げます。
3. 透明性の高い業者選びがすべて： 「減額なし」や「明確なキャンセル規定」など、消費者を守る姿勢のある業者を選びましょう。

あなたの愛車を、そしてあなた自身をトラブルから守るために、この記事が少しでもお役に立てたなら幸いです。

参考文献

• 訪問購入｜特定商取引法ガイド – 消費者庁
• 相談急増！中古自動車の売却トラブル – 独立行政法人国民生活センター