合成燃料(e-fuel)とは?愛車のエンジンはそのまま!旧車の未来を救う新技術を徹底解説

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合成燃料(e-fuel)とは?愛車のエンジンはそのまま!旧車の未来を救う新技術を徹底解説

「いつかガソリン車に乗れなくなる日が来るかもしれない…」古いクルマを愛するオーナーなら、誰もが一度は抱く不安ではないでしょうか。しかし、その不安を希望に変えるかもしれない新技術、それが「合成燃料(e-fuel)」です。この記事では、合成燃料がなぜ旧車の未来を救う切り札となり得るのか、その仕組みからメリット、そして未来の展望までを、専門用語を避けて分かりやすく解説します。

この記事を書いた人

  • 査定一道

    はじめまして。 当サイト『車買取の縁側』で案内人を務める、査定一道(さてい・かずみち)です。 長年、中古車査定の現場で1万台以上の車と向き合ってきました。 その中で痛感したのは、知識の差で愛車の価値が正当に評価されないケースの多さです。 このサイトでは、特定の業者に偏らない中立の立場で、あなたの愛車が最高の「縁」に巡り会うためのお手伝いをします。 売却に関する疑問や不安があれば、どうぞこの縁側でゆっくりしていってください。


この記事の監修者

  • 元大手中古車輸出企業 アフリカ市場担当マネージャー 自動車サーキュラーエコノミー研究家 15年間にわたり中古車輸出ビジネスに従事し、累計10万台以上の車両を海外市場へ送り出す。ケニア、タンザニア、UAEに計8年間駐在し、現地ディーラー網を構築。現在は独立し、自動車のグローバルな価値評価や、EVバッテリーの二次利用に関するコンサルティングを行っている。

そもそも合成燃料(e-fuel)とは?

👉 このパートをまとめると!
合成燃料(e-fuel)とは、再生可能エネルギーを使って作られる人工的な石油です。燃やすとCO2は出ますが、製造過程で大気中のCO2を利用するため、全体として地球上のCO2を増やさない「カーボンニュートラル」な燃料とされています。

合成燃料をひとことで言えば、「空気と水と電気から作られる、人工的なガソリン」です。もう少し詳しく見ていきましょう。

なぜ「カーボンニュートラル」なのか?仕組みを分かりやすく解説

合成燃料が環境に優しいとされる理由は、その製造プロセスにあります。

  1. まず、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使って、水を電気分解し「水素(H2)」を取り出します。
  2. 次に、工場や大気中から回収した「二酸化炭素(CO2)」と、先ほど作った「水素(H2)」を化学的に合成させます。
  3. このプロセスを経て、ガソリンや軽油とほぼ同じ成分を持つ液体燃料(炭化水素)が生まれます。これが合成燃料です。

重要なのは、燃焼時にCO2を排出する点はガソリンと同じですが、その原料となるCO2を大気中から回収しているという点です。つまり、「使う分をあらかじめ空気中から借りてきている」ようなイメージで、地球全体のCO2総量を増やさないことから「カーボンニュートラル」と呼ばれているのです。

ガソリンとの違いは?性能や価格はどうなる?

合成燃料は、既存のガソリンとほぼ同じように使用できるのが最大の特徴です。

  • 性能:オクタン価などを調整できるため、現在のハイオクガソリンと同等以上の性能を発揮できると期待されています。ノッキングが起こりにくく、エンジンが持つ本来のパワーを引き出せる可能性があります。
  • 価格:現在の最大の課題は、製造コストの高さです。2024年時点では1リットルあたり数百円から1000円近くと非常に高価ですが、政府や自動車業界は技術開発を進め、2040年頃までにはガソリンと同程度の価格にすることを目指しています。

旧車オーナーにとっての3つの大きなメリット

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旧車オーナーにとって、合成燃料は「エンジンの改造不要」「環境への配慮」「EV化以外の選択肢」という3つの大きなメリットをもたらし、愛車との未来を明るく照らす希望となります。

この新技術が、なぜ私たち旧車・クラシックカーのオーナーにとって希望の光となるのでしょうか。そこには3つの明確なメリットがあります。

メリット1:愛車のエンジンも給油口も、改造は一切不要

最大のメリットは、現在使っているガソリンと全く同じように給油し、走行できる点です。EV(電気自動車)化のように、愛車の心臓であるエンジンやトランスミッション、燃料タンクなどを取り外す必要は一切ありません。これまで通り、ガソリンスタンドで給油するのと同じ感覚でエネルギーを補充できるのです。

メリット2:環境に配慮しながら、エンジン音と鼓動を楽しめる

「環境問題は気になる。でも、愛車のエンジン音や振動、排気の匂いが好きだ」という葛藤を抱えるオーナーは少なくありません。合成燃料は、このジレンマを解決します。カーボンニュートラルな燃料を使うことで、社会的な責任を果たしつつ、内燃機関が持つ独特のフィーリングや文化を未来へと継承していくことができるのです。

メリット3:「EV化」以外の新たな選択肢が生まれる

これまで、旧車を未来で乗り続けるための現実的な選択肢は、高価なEVコンバージョンが中心でした。しかし、合成燃料が普及すれば、「オリジナルのエンジンを維持する」という、もう一つの確かな選択肢が生まれます。これにより、クルマの文化的な価値を損なうことなく、多様な形で自動車遺産を後世に残していく道が拓かれるのです。

合成燃料の課題と未来への展望

👉 このパートをまとめると!
合成燃料の主な課題は製造コストの高さですが、技術革新と量産化により価格は下がると予測されています。2030年代には商用化が始まり、旧車だけでなくモータースポーツなどでの活用も期待されています。

もちろん、この夢の燃料が普及するまでには、まだ乗り越えるべきハードルがあります。

課題:製造コストの高さとエネルギー効率

前述の通り、現在の最大の課題は製造コストです。再生可能エネルギーによる発電コストや、CO2を分離・回収する技術のコストをいかに下げられるかが普及の鍵となります。また、「電気→水素→燃料」という変換プロセスは、電気を直接バッテリーに充電するEVに比べてエネルギー効率が低いという指摘もあります。

未来への展望:2030年代の商用化を目指して

日本では、2030年代前半の商用化を目指し、官民一体となった技術開発が進められています。最初は、航空機や船舶、そして我々のようなクラシックカーやモータースポーツといった、電動化が難しい分野での活用から始まると考えられています。技術革新が進めば、いつか当たり前のようにガソリンスタンドで「e-fuel満タン」と頼む日が来るかもしれません。

まとめ:合成燃料は、愛車との物語を未来へ紡ぐための希望

合成燃料(e-fuel)は、単なる新技術ではありません。それは、私たちが愛してやまない内燃機関の文化と、脱炭素社会という未来の要請を両立させるための、極めて重要な選択肢です。

コストという大きな課題はありますが、技術は常に進化します。愛車のエンジン音を聞きながら、環境にも配慮できる未来。合成燃料は、そんな希望を私たちに与えてくれます。愛車との物語を、さらにその先の未来へと紡いでいくために、この新しい燃料の動向に、これからも注目していきましょう。

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