相続した車の売却は待って!必要書類とトラブル回避の全手順を行政書士が解説

車の売却・買取ノウハウ

相続した車の売却は待って!必要書類とトラブル回避の全手順を行政書士が解説

突然のことで、ご親族を亡くされ、心身ともにお疲れのことと存じます。そんな中、故人が大切にされていた車の相続と、その後の売却手続きについて、何から手をつければ良いのか分からず、途方に暮れていらっしゃるのではないでしょうか。

ご安心ください。相続した車の売却は、通常の売却とは異なり、いくつかの法的な手続きが必要になりますが、手順を一つひとつ理解して進めれば、決して難しいものではありません。

この記事では、自動車手続きを専門とする行政書士が、相続した車の売却に必要な書類から、トラブルを未然に防ぐための具体的なステップまで、あなたの不安が安心に変わるよう、丁寧に解説します。

この記事を書いた人
  • 査定一道

    はじめまして。 当サイト『車買取の縁側』で案内人を務める、査定一道(さてい・かずみち)です。 長年、中古車査定の現場で1万台以上の車と向き合ってきました。 その中で痛感したのは、知識の差で愛車の価値が正当に評価されないケースの多さです。 このサイトでは、特定の業者に偏らない中立の立場で、あなたの愛車が最高の「縁」に巡り会うためのお手伝いをします。 売却に関する疑問や不安があれば、どうぞこの縁側でゆっくりしていってください。


この記事の監修者
  • 渡辺 浩一/行政書士(自動車手続き専門)

    自動車販売店での勤務経験を経て、行政書士資格を取得。現在は、自動車登録・廃車手続きを専門に扱う行政書士事務所の代表を務める。年間500件以上の車庫証明や名義変更、抹消登録手続きを手掛ける。複雑な手続きを一般の消費者にも分かりやすく解説することに定評があり、「手続きの不安を解消し、スムーズなカーライフをサポートすること」をモットーとしている。

まず確認すべき3つのこと:相続した車を売る前の必須チェックリスト

売却手続きを始める前に、まず現状を正確に把握することが重要です。以下の3つのポイントを必ず確認してください。

1. 車の名義(所有者)は誰か?

まず、故人の車の自動車検査証(車検証)を見て、「所有者」の欄に誰の名前が記載されているかを確認します。ローンで購入した場合、所有者がディーラーや信販会社になっていること(所有権留保)があります。所有者が故人本人でない場合は、売却の前にローン会社への残債確認と所有権解除の手続きが別途必要になります。

2. 相続人は誰か?(単独相続か共同相続か)

次に、車の相続人が誰になるのかを確定させる必要があります。法定相続人があなた一人(単独相続)なのか、兄弟や他の親族など複数人いる(共同相続)のかによって、後の手続きが変わってきます。

3. 遺言書の有無

故人が遺言書を残している場合、その内容が最優先されます。遺言書で車の相続人が指定されていれば、原則としてその人が車を相続します。遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行う必要があります。

【状況別】相続した車の名義変更(移転登録)に必要な書類一覧

相続した車を売却するには、まず故人から相続人の名義へ変更(移転登録)する必要があります。相続人が一人の場合と複数いる場合で必要書類が異なります。

必要書類 単独相続の場合 共同相続の場合
故人(被相続人)の戸籍謄本または除籍謄本 必須 必須
相続人全員が記載された戸籍謄本 必須 必須
新しい所有者(相続人)の印鑑登録証明書 必須 必須
新しい所有者(相続人)の実印 必須 必須
遺産分割協議書 不要 必須
自動車検査証(車検証) 必須 必須
車庫証明書 必須 必須
手数料納付書、申請書、自動車税申告書 必須 必須

※戸籍謄本は、故人の死亡と相続人全員の関係が証明できるものが必要です。本籍地の役所で取得します。

遺産分割協議書とは?共同相続で必須となる重要書類

相続人が複数いる場合、誰がその車を相続するのかを相続人全員で合意したことを証明する「遺産分割協議書」という書類が絶対に必要になります。これがないと、運輸支局は名義変更の手続きを受け付けてくれません。

遺産分割協議書には、以下の項目を記載し、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。

  • 被相続人(故人)の情報(氏名、最後の住所、死亡年月日)
  • 相続財産である自動車の情報(車台番号、登録番号など車検証の記載通りに)
  • その自動車を誰が相続するのかという合意内容
  • 相続人全員の署名と実印の押印
  • 作成年月日

この書類には、相続人全員分の印鑑登録証明書もセットで必要となるため、事前に全員に連絡を取り、準備を依頼しておくことがスムーズに進めるコツです。

相続した車を売却する5つのステップ

全体の流れを把握しておきましょう。以下の5ステップで進めていきます。

Step1: 相続人の確定と遺産分割協議

戸籍謄本を取り寄せ、法的に誰が相続人になるのかを確定させます。相続人が複数いる場合は、全員で話し合い、誰が車を相続するのかを決定し、遺産分割協議書を作成します。

Step2: 必要書類の収集

上記の書類一覧を参考に、役所などで必要な書類をすべて収集します。遠方に住んでいる相続人がいる場合は、郵送でのやり取りが必要になるため、時間に余裕を持って進めましょう。

Step3: 車の名義変更(相続人へ)

収集した書類を持って、管轄の運輸支局で車の名義を故人からあなた(または車を相続した人)へ変更します。この手続きは複雑なため、行政書士に代行を依頼することも可能です。

Step4: 買取業者へ査定・売却

車の名義があなたに変われば、あとは通常の売却手続きと同じです。複数の買取業者に査定を依頼し、最も条件の良い業者に売却します。

Step5: 税金の確認

車の価値によっては、相続税や譲渡所得(売却益に対する税金)が発生する場合があります。売却が完了したら、念のため税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 相続放棄した場合、車はどうなりますか?

A. 相続放棄をすると、プラスの財産(預貯金など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)もすべて引き継ぐ権利を失います。車も財産の一部ですので、相続放棄した場合は売却することはできません。車は次の順位の相続人に引き継がれるか、相続人が誰もいない場合は国のものとなります。

Q. 故人の車にローンが残っている場合はどうすればいいですか?

A. ローン(債務)も相続の対象となります。まずはローン会社に連絡し、残債がいくらあるかを確認してください。車の査定額でローンを完済できるかどうかがポイントになります。このケースは手続きがさらに複雑になるため、買取業者や法律の専門家に相談しながら進めるのが安全です。

Q. 車検が切れている車でも売却できますか?

A. はい、売却可能です。ただし、車検が切れていると公道を走行できないため、買取業者に積載車で引き取りに来てもらう必要があります。査定額に影響はありますが、多くの業者で対応してもらえますので、正直に伝えましょう。

まとめ:相続した車の売却は、焦らず専門家への相談も視野に

相続した車の売却は、通常の売却に比べて時間と手間がかかります。特に相続人が複数いる場合は、全員の協力が不可欠です。

手続きの複雑さに不安を感じたり、相続人同士での話し合いが難航したりした場合は、一人で抱え込まず、行政書士や弁護士といった法律の専門家、または相続手続きに詳しい車買取業者に相談することも有効な選択肢です。

故人が大切にしていた愛車を、トラブルなく、そして納得のいく形で次のステップへと繋げられるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

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