【テンプレート付】車の個人売買契約書の書き方|トラブルを100%防ぐ必須項目と注意点を元査定士が解説

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【テンプレート付】車の個人売買契約書の書き方|トラブルを100%防ぐ必須項目と注意点を元査定士が解説

「個人売買は契約書なしでも大丈夫?」「ネットの雛形をそのまま使っていいの?」車の個人売買を前に、多くの方が契約書について不安を感じています。結論から言うと、詳細な契約書は、あなたを未来のトラブルから守る最強のお守りです。口約束や安易なテンプレートは、時に数百万円の損失に繋がることもあります。

この記事では、元査定士として数々の売買トラブルを見てきた私が、法的に有効で、かつあなたに不利にならないための契約書の書き方、必ず盛り込むべき必須項目、そして署名前に確認すべき重要注意点を、具体的なテンプレート付きで徹底的に解説します。

この記事を書いた人

  • 査定一道

    はじめまして。 当サイト『車買取の縁側』で案内人を務める、査定一道(さてい・かずみち)です。 長年、中古車査定の現場で1万台以上の車と向き合ってきました。 その中で痛感したのは、知識の差で愛車の価値が正当に評価されないケースの多さです。 このサイトでは、特定の業者に偏らない中立の立場で、あなたの愛車が最高の「縁」に巡り会うためのお手伝いをします。 売却に関する疑問や不安があれば、どうぞこの縁側でゆっくりしていってください。


この記事の監修者

  • 高橋 誠

    元大手中古車買取店・トップ査定士、現・自動車売買コンサルタント。大手中古車買取店に10年間勤務し、年間500台以上の査定を担当。業界の不透明な慣行に疑問を感じ独立。現在は消費者向けメディア「カーライフ・羅針盤」を主宰し、完全に中立な立場から「消費者が損をしないための情報」を発信している。


なぜ契約書が「最強のお守り」になるのか?

そもそも、なぜ個人売買で契約書がそれほどまでに重要なのでしょうか。それは、法律で定められた「契約不適合責任」から身を守るためです。

知らないと怖い「契約不適合責任」とは

「契約不適合責任」とは、簡単に言えば「契約内容と違う商品を売った場合、売り手は責任を負わなければならない」というルールです。例えば、「修復歴なし」として売った車に、後から修復歴が見つかった場合、買い手は売り手に対して修理費用の請求や、契約の解除を求めることができます。

この責任は、売り手がその欠陥を知っていたかどうかに関わらず発生します。つまり「自分も知らなかった」という言い訳は通用しません。この売り手の重い責任を、双方合意の上で限定・明確化するために、契約書が不可欠なのです。

「現状有姿(現状渡し)」を法的に有効にする

個人売買では「現状有姿(げんじょうゆうし)」、つまり「今あるがままの状態で引き渡します」という条件で取引されるのが一般的です。しかし、この「現状有姿」という言葉だけでは、契約不適合責任を完全に免れることはできません。

車両の状態(キズ、凹み、機関の調子など)を契約書に具体的に明記し、「買主は上記の状態を理解・納得した上で購入するものとし、引渡し後に発見された不具合について、売主は契約不適合責任を負わない」といった一文を盛り込むことで、初めて「現状有姿」の特約が法的に有効になるのです。


契約書に必ず盛り込むべき10の必須項目

では、具体的にどのような項目を契約書に記載すれば良いのでしょうか。以下の10項目は、トラブルを未然に防ぐために最低限必要な情報です。漏れなく記載しましょう。

  1. 売買対象の車両情報:車検証の通りに、車名、登録番号(ナンバー)、型式、車台番号、初度登録年月、走行距離を正確に記載します。
  2. 売買代金:金額を明確に記載します。「(うち、リサイクル預託金〇〇円を含む)」と書き添えるとより親切です。
  3. 代金の支払方法と期日:現金手渡しなのか、銀行振込なのか。いつまでに支払うのかを具体的に定めます。
  4. 車両の引渡し日と場所:いつ、どこで車を引き渡すのかを明記します。
  5. 名義変更(移転登録)の期限と責任者いつまでに、どちらの責任で名義変更を行うのかを定めます。通常は買主の責任で行いますが、期限(例:引渡し後15日以内)を設けることが重要です。
  6. 名義変更完了の確認方法:名義変更後、新しい車検証のコピーを売主に送付するなど、完了を確認する方法を定めます。
  7. 車両の状態(瑕疵の告知):キズ、凹み、修復歴の有無、機関の不具合など、売主が把握している車両の問題点を正直に全て記載します。
  8. 契約不適合責任の取り扱い:前述の通り、「現状有姿」とし、引渡し後の不具合について売主が責任を負わない旨を明記します。
  9. 契約の解除(キャンセル)に関する条件:どのような場合に契約を解除できるのか、またその際の違約金の取り扱いなどを定めておくと、一方的なキャンセルを防げます。
  10. 契約日と売主・買主の署名・捺印:契約を締結した日付と、双方の氏名、住所を自署し、実印を捺印します。

【コピー&ペーストで使える】車の個人売買契約書テンプレート

以下に、上記10項目を網羅した基本的な契約書のテンプレートを用意しました。ご自身の状況に合わせて内容を修正し、ご活用ください。

自動車売買契約書

売主(以下「甲」という)と買主(以下「乙」という)は、以下の通り自動車売買契約を締結する。

第1条(売買契約)
甲は乙に対し、下記表示の自動車(以下「本件車両」という)を、定める条項に従い売り渡し、乙はこれを買い受ける。

【本件車両の表示】
・車名:
・登録番号:
・型式:
・車台番号:
・初度登録年月:
・走行距離計表示値: km (令和〇年〇月〇日現在)

第2条(売買代金)
本件車両の売買代金は、金〇〇円(うち、リサイクル預託金〇〇円を含む)とする。

第3条(支払い)
乙は甲に対し、前条の売買代金を令和〇年〇月〇日までに、〇〇(現金手渡し/銀行振込)の方法により支払う。

第4条(車両の引渡し)
甲は乙に対し、売買代金の支払いを甲が確認した後、令和〇年〇月〇日までに、〇〇にて本件車両を引き渡す。

第5条(名義変更)
本件車両の名義変更(移転登録)手続きは、乙の責任と負担において、車両引渡し日から15日以内に行うものとする。乙は、名義変更完了後、速やかにその証明として新しい車検証の写しを甲に送付する。

第6条(契約不適合責任)
乙は、本件車両が現状有姿で引き渡されることを確認し、以下の状態を承諾する。
【車両の状態】(例:右フロントドアに擦り傷あり、エンジンオイルの滲みあり等)
本契約において、甲は乙に対し、本件車両の引渡し後に発見された故障・不具合等について、一切の契約不適合責任を負わないものとする。

第7条(契約解除)
(省略)

上記契約の成立を証するため、本契約書を2通作成し、甲乙それぞれ署名捺印の上、各1通を保有する。

令和〇年〇月〇日

甲(売主)
住所:
氏名:          印

乙(買主)
住所:
氏名:          印


契約書作成・締結時の3つの重要注意点

テンプレートを使えば契約書は作成できますが、締結する際にはいくつか注意点があります。これを知らないと、せっかくの契約書が無効になる可能性もあります。

  1. 署名は必ず自署で、印鑑は実印を使用する
    パソコンで作成した場合でも、氏名・住所は必ずボールペン等で自署してください。また、印鑑は認印ではなく、市区町村に登録された「実印」を使用し、双方の「印鑑証明書」を添付するのが最も確実です。
  2. 契約書は2通作成し、双方が保管する
    同じ内容の契約書を2通作成し、それぞれが署名・捺印した上で1通ずつ保管します。これにより、後からどちらか一方が内容を改ざんすることを防ぎます。
  3. 空欄は作らない、修正は二重線と訂正印で
    金額や日付など、後から書き込めるような空欄は残さないようにしましょう。もし書き損じた場合は、修正液などは使わず、二重線を引いてその上に訂正印を押し、正しい内容を記載するのが正式な方法です。

よくある質問

Q. 契約書に収入印紙は必要ですか?

A. いいえ、個人間での売買契約書には収入印紙を貼る必要はありません。印紙税は、営業に関わる取引で作成される文書に対して課税されるためです。

Q. テンプレートを自分で修正しても大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です。むしろ、ご自身の取引内容に合わせて修正することが重要です。特に「車両の状態」については、具体的かつ正直に記載してください。ただし、法的な有効性に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。


まとめ:契約書は安心な個人売買の第一歩

車の個人売買における契約書は、単なる紙切れではありません。それは、予期せぬトラブルからあなた自身を守り、気持ちの良い取引を成立させるための、最も重要なツールです。

この記事で解説したポイントを押さえ、あなたの取引内容に合った契約書をしっかりと作成することで、個人売買のメリットを最大限に享受できるはずです。面倒に思えるかもしれませんが、この一手間が、未来の安心に繋がります。

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